昔はよく見かけた「忌中」の張り紙。子供の頃、ご不幸があったおうちの玄関先に貼られる、黒い四角で囲まれた「忌中」の文字は、誰に聞いたわけでもないのに、どことなく寂しそうで沈んでいるイメージを覚えたものです。最近では見かけることはほとんどなくなりました。
忌中とは、四十九日法要(仏式の場合)までの喪に服す期間の事です。
昔は外出を控えたり、家の中でも喪服を着て過ごしたりして、亡くなった家族の死を悼み、身を慎んで冥福を祈っていたようですが、現在では、仕事や学校をいつまでも休めるはずもなく、また役所の手続きや、四十九日法要の準備、お墓は?仏壇は?など、家族が亡くなった後の事が大変、とよく聞きます。忙しさで少し気が紛れて、悲しむどころではありません、ともお聞きします。
今と昔、どちらが良いのか、正しい答えはないと思います。
「忌中」には慶事への参加や神社へのお参りは控えるという習慣もあります。価値観が多様化する現代では消えつつありますが、まだまだ「忌中」は慎むべきという考えは残っています。結婚式への参列などは、御自身の気持ちだけでなく、相手先の親族のお考えも確認したうえで、参列するか否かの判断をされる事をお勧めいたします。
その中でも、現在でも広く浸透し残っているのは「喪中はがき」ではないでしょうか。
「忌中」を過ぎても一年間は「喪中」です。毎年の年賀ハガキは慎み、年末に「喪中はがき」を出される方がほとんどです。また家族葬が増えたため「喪中はがき」で初めて、葬儀を済ませた旨をお知らせする方も増えました。
しかし年賀はがきを出す方が少なくなっている現代、10年後には様子が変わっているかもしれませんね。
広島に多い浄土真宗では「忌中」とは掲げません。浄土真宗では、故人は亡くなった後、すぐに仏様になるという教えです。【浄土へ還(かえ)る】ことから「還浄(げんじょう)」という張り紙になります。