多様化する葬儀

「 月忌参りのお勤めに来られた菩提寺の坊守に、お内仏の荘厳の間違いを正していただきました 」 お年寄りにはお分かりいただける文章でしょうが、若い人にはちんぷんかんぷんでしょう。お若い方に限らず、年配の方でも今は使わない言葉かもしれません。

月忌参り(がっきまいり)

毎月の、亡くなった日と同じ日
1月 15日が命日なら毎月 15日の法要
命日である 1月 15日は「祥月命日(しょうつきめいにち)」といいます

菩提寺(ぼだいじ)

お付き合いのある、葬儀や法要をお願いする寺院

坊 守(ぼうもり)

寺院の番人のことですが、浄土真宗では住職の奥様のことを指します

御内仏(おいないぶつ)

仏壇、またはその中の本尊の事

荘 厳(しょうごん)

仏壇内の飾り

※ 厳密にいうと違う所もありますが、家庭内で使う場合のおおよその意味合いです。

一昔前、各家庭には菩提寺があり、家の中には仏壇があり、法要にお越しいただき、またお寺にもよくお参りしていました。寺院とのお付き合いは深く、仏教用語も生活の中にあり、宗教は身近なものでした。

現在、家の宗派も知らないし、もちろん付き合いのある寺院もない方は多く、「 直葬 」 「 火葬式 」 という形が増えています。通夜式・葬儀式という儀式的な要素を取り入れず、荼毘に付す(火葬)だけの葬儀です。しかし「 お経がいただきたい 」と希望される方は少なくありません。「 自分の時にはいいけど、親はちゃんと見送りたい 」 「 成仏するためには、お経を読んでもらわなくては 」 「 宗派は問わないので、お寺様に来てもらいたい 」 幼いころに経験している仏教との関わりを心が覚えているのでしょうか。

記憶を頼りに宗派を紐解いて探ることもできます。仏壇の中の御本尊は座っておられたか、立っておられたか。位牌なのか過去帳なのか、またどんなお勤めをしていたか。手掛かりを元に、代々受け継がれているご自身の宗派を確認するお手伝いもいたします。
葬儀は故人様のためだけにあらず、見送る側のための儀式でもあります。ひとつとして同じ葬儀はありません。多様化する葬儀ですが、それぞれの御見送り方で良いのではないでしょうか。